「退院したのに右下腹部やおへその周りがズキズキ痛む」「歩くと響くような違和感がある」といった声は、外来でも頻繁に寄せられます。虫垂炎退院後の日常生活注意点として、許容できる通常の創傷治癒過程の痛みと、再受診を要する異常な痛みを見分ける知識が不可欠です。
虫垂炎手術後のお腹の痛み原因の多くは、以下の生理的メカニズムによるものです。
- 腹腔鏡挿入創の筋肉・神経の修復:皮膚の表面が塞がっていても、内部の筋肉や筋膜が治癒する過程でチクチクとした痛みや突っ張り感が生じます。
- 炭酸ガスによる気腹痛:腹腔鏡手術時に視野を確保するために注入した二酸化炭素ガスが体内にわずかに残留し、横隔膜を刺激して肩や背中、上腹部に鈍痛をもたらす現象です(術後数日で自然吸収されます)。
- 腸管の蠕動痛(ぜんどうつう):手術刺激から回復しつつある腸が動く際、一時的なガス溜まりや痙攣様の痛みを覚えることがあります。
一方で、直ちに医療機関へ連絡・受診すべき危険信号(レッドフラッグ)として、以下の症状が挙げられます。
- 38度以上の発熱が持続する(腹腔内膿瘍や創部感染の兆候)。
- 日を追うごとに腹痛が増悪し、お腹全体が板のように硬くなる(腹膜炎のリスク)。
- 激しい吐き気、嘔吐、排ガス(おなら)や排便の完全な停止(術後イレウス・腸閉塞の疑い)。
- 手術の傷口から黄色や赤褐色の膿(うみ)や強い悪臭を伴う浸出液が出ている。