日本映画界において、ハリウッドの「メソッド演劇」のように肉体を劇的に変化させる俳優は決して多くない。その中で池脇千鶴は、声のトーンや歩き方だけでなく、体重の増減や皮膚感のコントロールまでをも演技の要素として組み込む数少ない存在だ。
『ジョゼとトラと魚たち』や『そこのみにて光輝く』など、彼女が過去に出演した名作群を振り返っても、役柄ごとに宿る「生きている人間の匂い」は際立っている。役になりきるために自らの容姿すら投げ打つ姿勢は、単なる職人技を超えた狂気すら感じさせる。彼女にとって肉体は表現のキャンバスであり、そこに現れる変化は病の徴候ではなく、作品への熱量そのものなのだ。