藤本タツキが描く物語の真骨頂は、獲得したあとの虚無感にある。目標を達成したデンジは、「夢は追いかけている間が一番楽しいのかもしれない」という生々しい哲学的な問いにぶち当たる。多くのダーク・ファンタジー作品が抱える「壮大な世界平和」の裏で、個人の極めて卑近な欲求が挫折し、再定義される過程が描かれているのだ。
パワーとの間で交わされた約束と、その後の気まずい沈黙。このプロットは、デンジという若者が本当の愛や他者との絆を理解するための不可欠なプロセスであり、単なる刺激的な展開にとどまらない深い文学性を示している。