日本人の韓国旅行といえば、長らく明洞や聖水(ソンス)、弘大(ホンデ)を舞台とした「コスメ爆買い・カフェ巡り・美容施術」という過密スケジュールが定番でした。しかし、観光庁や旅行動向の定性調査を紐解くと、旅の目的に明らかな地殻変動が生じています。人混みと情報過多の都市型観光に疲弊した層が、精神的充足感を求めて「チル旅(のんびり過ごす旅)」へと舵を切り始めているのです。
心理学で語られる「心理的バウンダリー(境界線)」の回復という観点からも、チェジュ島の環境は理想的です。黒い玄武岩が連なる海岸線、見渡す限りのみかん畑、そして韓国最高峰の漢拏山(ハルラサン)が織りなす圧倒的な自然美は、日常のストレスで張り詰めた神経を緩める作用をもたらします。
韓国国内でも数年前から「チェジュ島で1ヶ月暮らす(済州サリ)」という生き方が若者やクリエイターの間でブームとなりましたが、その洗練されたエッセンスがカフェカルチャーや隠れ家リゾートとして結実しました。ただの田舎ではなく、都会的な感性を失わずに大自然に身を委ねられる絶妙なバランスこそが、感度の高い旅行者を惹きつける真の理由です。