1973年の導入以来、多くの入館者に強烈な印象を与え続けたあのプラスチック製の人形たち。赤く焼けただれた皮膚を両手から垂らし、がれきの中を彷徨う親子らの姿は、まさに「ヒロシマの地獄」そのものを具現化していた。しかし、2017年のリニューアルに伴い、資料館はこれらをすべて撤去した。その背景には、単に「子供が怖がるから」という単純な理由だけではない、資料館側の深い葛藤があった。
資料館が下した決断は、「本物の持つ力」への原点回帰だった。被爆者が実際に身につけていた衣服、ボロボロになった三輪車、焼け焦げた弁当箱。これら実物資料こそが、虚飾のない真実を語るという判断だ。人形はあくまで「作られた再現」に過ぎないという批判的な見方も、撤去を後押しした要因の一つだった。