木造2階建ての邸宅に一歩足を踏み入れると、まず目を奪われるのが板畳廊下の滑らかな質感と、窓越しに広がる光のコントラストだ。主屋はほぼ全編が杉材を中心に建築されており、木肌の温もりと質感がそのまま生かされた伝統的な手法が随所に見られる。
特に印象的なのは、杉の板目を意匠として大胆に取り入れた杉の間や、格調高い応接室の仕上がりだ。西洋建築の要素を微かに覗かせつつも、根底に流れるのは職人の繊細な和風技法。ガラス戸に使われている歪みのある手吹きガラスは、光を柔らかく屈折させ、廊下に独特の揺らぎを作り出す。大正時代ならではのハイカラな感性と伝統技術が融合した空間設計は、見る者の心を惹きつけて離さない。