『Blessing』を聴いたことがない人や、サビだけを耳にした人は、本作を「純粋無垢な応援ソング」「明るいパーティーチューン」と捉えがちです。しかし、それこそが本作に関する最も大きな世間の誤解です。
この楽曲の本質は、2番のAメロからBメロにかけて展開される、息が詰まるほどリアルで泥臭い生存戦略にあります。特に強烈なのが、以下のフレーズです。
「生き抜くためなら 棒に振れ 水を差せ 煙に捲け 油を売れ」
教育現場や自己啓発の世界では、「真面目に努力しろ」「チャンスを棒に振るな」「場の空気を読め」と教え込まれます。しかし、halyosy氏の歌詞はその真逆を行きます。「棒に振る(好機を逃す)」「水を差す(場の空気を乱す)」「煙に捲く(適当にごまかす)」「油を売る(サボる)」――これらはいずれも、世間一般では否定的なニュアンスを持つ慣用句です。
作詞者はこれらを意図的に並べ、「世間の常識や期待に応えようとして心が壊れてしまうくらいなら、全部投げ出してサボっても、嘘をついて逃げてもいい。どんなに格好悪くても、泥水をすすってでも、とにかく死なずに明日まで生き残れ」という極限の生存肯定を提示しているのです。綺麗事ばかりを並べた安易なポジティブソングではなく、人生の挫折や限界を知り尽くした大人だからこそ書ける「安全弁としての歌詞」が存在すること。これこそが、ネット社会の片隅で追い詰められていた無数の若者たちを救い上げた決定的な要因でした。