「朝焼きのタルト生地が売り切れたら、その日の追加販売は一切しない」。厨房の奥でパティシエが語った言葉に、この街の洋菓子づくりの真髄が凝縮されている。今回の取材で明らかになったのは、地元客が足繁く通う人気パティスリーが密かに仕掛ける季節限定タルトの圧倒的な完成度だ。
焼き色を極限まで見極めたパート・シュクレに、コク深いクレーム・ダマンド。その上に惜しげもなく盛られるのは、毎朝農家から直接届く選りすぐりの果実だ。ナイフを入れた瞬間に響く軽快な破砕音と、果汁がじゅわりと溢れ出すコントラスト。手土産用として用意された個包装の焼き菓子ギフトも、午前中のうちに棚から姿を消していく。知る人ぞ知る限定ガトーの存在が、リピーターの熱気をさらに加速させている。