今や世界中で愛されるパッタイだが、その誕生には極めて政治的な歴史が隠されている。第二次世界大戦期、当時のタイ首相プレーク・ピブーンソンクラームは、米の消費量を抑えるとともにナショナリズムを高揚させる国策として、米を原料とした麺料理の普及を強烈に推進した。これが現代の炒め麺文化の出発点である。
つまり、伝統料理に見えるこの一品は、国家の近代化と国民のアイデンティティ形成のために戦略的に考案されたナショナルディッシュなのだ。現在ではタイ政府観光庁もソフトパワー政策の中核として美食外交を展開しており、自国の文化を世界へ広める象徴的なアイコンとして位置づけている。