稲田豊史氏の考察が単なる机上の空論に終わらず、常に現場の肌感覚を伴っている理由は、そのユニークなキャリア形成にあります。カルチャーシーンの最前線で磨かれたプロフィールの全貌は次の通りです。
1974年生まれ、愛知県出身。横浜国立大学経済学部を卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現・ギャガ)に入社します。興行や配給といった映画ビジネスの基礎に触れた後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループ傘下であった老舗のキネマ旬報社へと転籍しました。
キネマ旬報社時代は、映画専門情報誌『DVD&ビデオでーた』編集部や書籍編集部に在籍。長年にわたり映画雑誌、ムック、単行本の編集を手掛け、第一線の映画監督、脚本家、俳優たちへの取材やコンテンツ制作に深くコミットしました。映像作品がどれほどの熱量と時間を注ぎ込んで作られているかを熟知する「作り手寄りの編集者」であったからこそ、独立後に目撃した「ファスト映画や倍速視聴の台頭」に対する違和感と問題意識が人一倍強かったのは自然な流れと言えます。
2013年にフリーランスとして独立して以降は、映画や漫画、サブカルチャーの評論にとどまらず、社会問題や人間関係の機微に切り込むノンフィクション・コラムニストとして縦横無尽の執筆活動を展開しています。