現在の精神医療や依存症治療において、離脱症状を気合いや根性で耐えさせる前時代的な手法は一切行われません。エビデンスに基づいたアルコール離脱の治療薬(抗不安薬など)と適切な管理体制により、苦痛を最小限に抑えながら安全に離脱期を脱するプロトコルが確立されています。
治療の中心となるのは、アルコールと同様に脳内のGABA(ガンマアミノ酪酸)受容体に作用するベンゾジアゼピン系抗不安薬(ジアゼパムやロラゼパムなど)です。これを計画的に投与して過剰な中枢神経の興奮を鎮静化させ、自律神経の過敏反応や痙攣発作、振戦せん妄の発症を未然に防ぎます。症状の沈静化に合わせて数日から1〜2週間かけて徐々に薬の量を減らし(漸減法)、薬物への二次依存を防ぐよう厳密にコントロールされます。
重症リスクが高い場合や自宅環境では飲酒欲求を断ち切れないケースでは、アルコール依存症の精神科入院治療が最も確実な選択肢となります。入院治療では、24時間体制のバイタル監視下で点滴(脱水補正およびウェルニッケ脳症を予防するための高用量ビタミンB1製剤の投与)が行われ、安全・快適に急性期を乗り切ることが可能です。急性期の離脱症状が落ち着いた後は、心理教育プログラムや集団精神療法、自助グループへの参加などを通じて、息の長い断酒継続に向けた本格的なリハビリテーションへと進んでいきます。