ブランドの歴史を語る上で欠かせないのが、シネマとの濃密な関係性だ。特に、ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)をはじめとするヌーヴェルヴァーグの監督たちとの交流は、アニエスベー(agnès b.)のクリエイティビティに決定的な影響を与えた。スクリーンに映し出される自由で不羈な空気感は、そのまま彼女の洋服作りの哲学へと昇華されていく。
規則に縛られないカメラワークや日常の切り取り方。そうした映画の実験的精神が、衣服のカットやカラーパレットに直接反響していたのだ。モードと映像表現が互いに刺激を与え合う幸福な関係が、ここにあった。