岸田今日子さんが放っていた独特の知性と気品は、日本近代文化を牽引した名門一家の血筋と無縁ではありません。彼女の家族構成を振り返ると、まさに日本の文学・演劇史そのものといえる錚々たる顔ぶれが並びます。
父は、日本の近代劇作家の草分けであり、岸田國士戯曲賞にその名を残す劇作家・小説家の岸田國士(くにお)氏です。幼少期から父の書斎に並ぶ膨大な書籍や、出入りする気鋭の文化人たちに囲まれて育った経験が、彼女の卓越した言語感覚の礎となりました。
実姉は、詩人・童話作家として知られ、アニメ『アルプスの少女ハイジ』の主題歌作詞などを手掛けた岸田衿子さん。さらに、カルト的な人気を誇る個性派俳優として活躍した岸田森(しん)さんは従兄弟にあたります。言葉を紡ぐ者、身体で表現する者が自然と集うこの芸術的な環境が、唯一無二の表現者・岸田今日子を育む決定的な土壌となりました。