議論を整理するうえで避けて通れないのが、「安楽死」と「尊厳死」の概念的な線引きだ。一般に安楽死は、医師が薬物を投与する「積極的安楽死」や、処方された薬を本人が服用する「介助自殺」を指す。いずれも自らの意志で生命を積極的に終わらせる行為が伴う。
これに対し、アメリカの一部の州などで制定されている尊厳死法(End of Life Option Acts等)や過剰な延命治療の拒否は、自然な死の過程を受け入れる思想に基づいている。人工呼吸器の装着拒否や胃ろうの中止など、延命措置を行わずに自然死を迎える「消極的安楽死(尊厳死)」とは法的解釈も手続きも大きく異なる。この区分けを曖昧にしたまま議論を進めると、生命倫理・医療ヘルスケア産業における現場の混乱を招くリスクが高い。