一般的な製菓業の店舗で使用されるオーブンは、熱風を対流させることで生地全体を包み込むように加熱する。一方、多層構造の鍋を使った調理では、底面からの伝導熱が側面に伝わり、鍋内部に閉じ込められた空気が熱せられることで「直火式オーブン」のような環境が作られる。
洋菓子作りの物理現象として、生地の膨張は内部に含まれた空気の膨張と水分の蒸気化によって起こる。鍋内部の密閉性が高すぎると、気化しようとする水分が逃げ場を失って圧力となり、生地の立ち上がりを抑え込んでしまう。プロの視点からは、適度な保温性を維持しつつも過剰な蒸気を逃がす環境を作ることこそが、膨らみの良さと軽やかな口溶けを両立させる最大の鍵とされる。