イディオムの習得はなぜこれほどまでに学習者の頭を悩ませるのか。世界的な言語学者David Crystalは、英語の語彙とリズムに関する多数の著作の中で、慣用句(English Idioms)が果たす認知的役割を繰り返し強調している。彼によれば、定型表現は単なる装飾ではなく、会話のテンポを整え、聞き手との心理的距離を一瞬で縮めるための「社会的シグナル」なのだ。
応用言語学(Applied Linguistics)の領域においても、複数の単語が不可分に結びついたチャンク表現の処理速度は、流暢なコミュニケーションの成否を分ける鍵として研究されてきた。権威ある Oxford English Dictionary を紐解けば、「all in all」の原型は中英語期から形を変えながら受け継がれてきたことが分かる。聖書やシェイクスピアの時代から現代に至るまで、多様な要素をひとまとめにして結論を導くための強力な統辞デバイスとして機能し続けてきたのだ。