生理的乾燥の範囲を超えた場合、疑うべき病態の双璧となるのが「発熱」と「脱水」です。臨床現場において獣医師が真っ先に警戒する、猫の鼻が乾く病気の真相を掘り下げます。
まず把握しておくべきは、猫の平熱と発熱時の症状に関する正確な基準値です。成猫の正常な直腸温は38.0℃〜39.2℃と人間よりも高めに設定されています。これが39.5℃以上に達すると医学的な発熱状態と診断されます。発熱が生じると体表温度の上昇に伴い鼻鏡の水分が急速に蒸発し、触れた瞬間に明らかな熱を帯びたカサカサ状態へと変化します。これが、現場で注視される猫の発熱と鼻の乾燥サインです。熱がある猫は耳の付け根や肉球も熱くなり、薄暗い部屋の隅で丸まり、呼吸数が1分間に40回を超えるなど浅く速い呼吸(パンティング)を見せることが特徴です。
さらに見落としてはならないのが、慢性腎臓病や感染症、下痢・嘔吐に伴う脱水症状です。猫はもともと砂漠地帯原産のリビアヤマネコを祖先に持つため喉の渇きに鈍感で、体内水分が枯渇しやすい生物学的脆弱性を抱えています。体内の水分量が不足すると、生体は生命維持に不可欠な脳や心臓へ優先的に血流を配分するため、末梢組織である皮膚や鼻鏡への水分供給を遮断します。
家庭で即座に実践できる猫の脱水症状の見分け方として、獣医師が推奨する「スキン・テント・テスト」が有効です。猫の首の後ろや背中の皮膚を指で軽くつまみ上げ、パッと手を離します。正常な状態であれば1秒以内に元の平らな状態へ戻りますが、重度の脱水に陥っている場合は弾力が失われ、2秒以上皮膚がつまんだ形のまま戻りません。加えて、唇をめくって歯茎を触れた際にネバネバと粘り気がある場合や、指で歯茎を圧迫して白くした部位の血色が2秒以内にピンク色へ戻らない(毛細血管再充満時間の遅延)場合、全身性の脱水が急速に進行している証拠です。