1980年代中盤、テレビ画面に映し出される女性タレントの多くは、制作者側が求めた「可愛らしさ」や「素直さ」を演じることが求められていた。しかし、小坂麗子が醸し出す雰囲気は、そうしたステレオタイプとは一線を画していた。
彼女の言葉には、常に自己の客観視が伴っていた。媚びない視線。カメラを鋭く見つめる眼光。過剰な演出で飾られたテレビ番組の中でも、彼女が口を開くと、画面の空気が瞬時に引き締まった。視聴者はそこに、単なる消費対象としてのアイドルではなく、独自の思考を持つ一人の自立した人間の姿を見ていたのだ。
芸能界という巨大な虚構の空間で、どのように自己を維持するか。小坂麗子という存在は、当時の若者層、とりわけ既存の価値観に息苦しさを感じていた層にとって、一種の解放感をもたらす象徴でもあった。