大通公園の東端に建つ「さっぽろテレビ塔」と対をなすように、西の終点に位置する札幌市資料館。この建物は、大正時代末期に全国で8か所設置された控訴院(現在の高等裁判所)のうち、現存するわずか2棟(札幌と名古屋)のひとつとして極めて高い歴史的価値を誇ります。1973年に札幌市資料館として再生され、1997年には国の登録有形文化財に登録されました。
建築資材には、札幌市南区で産出された札幌軟石(さっぽろなんせき)と鉄筋コンクリート、レンガが巧みに組み合わされています。設計を手掛けたのは司法省営繕課の技師たちであり、左右対称のネオ・バロック様式を基調とした荘厳なファサードが特徴です。外壁の細部を観察すると、正面玄関上部にはギリシャ神話の法の女神を思わせるレリーフではなく、公平を象徴する天秤を持った目隠しの像や、知恵の象徴であるフクロウの彫刻が刻まれており、当時の司法関係者が込めた厳格な正義への祈りが今なお伝わってきます。
札幌市公式の保存記録によると、北海道特有の厳しい寒暖差や凍害に耐え抜いた外壁石材の保存状態は国内屈指と評価されています。公園のバラ園越しに眺める石造りの陰影は、大正から昭和初期の帝都・地方都市の近代化遺産を象徴する景観として、写真愛好家の間でも絶好の撮影スポットとなっています。