あの一切れの野菜は、なぜただの緑色の球体として電波に乗ってしまったのか。2026年現在、当時のスタッフ証言や関係者の回想によって、その舞台裏に存在した過酷すぎるスケジュールの実像が浮き彫りになっている。
アニメーション制作を担当した株式会社童夢は、当時複数のラインを同時に抱え、極度の人手不足に陥っていた。監督を務めた太田雅彦氏をはじめとするメインスタッフの手が回りきらず、第3話の作画作業は海外のグロス請け(外部委託)へと出されることになる。だが、引き継ぎの段階で決定的なコミュニケーション不全が発生した。原画チェックの時間が十分に確保できないまま工程が進行し、作画監督の修正が入らない状態で仕上げ(仕上げ彩色)へと回されてしまったのだ。
さらに災いしたのは、原作イラストレーターであるべっかんこう氏の繊細で美しいキャラクターデザインと、アニメ現場の極限状態との乖離だった。画面上のすべての要素に気を配る余裕を失った現場では、レイアウト段階で仮に置かれた「ただの緑の円球」がそのまま彩色され、誰のチェックも抜けて最終マスターテープへと組み込まれてしまったのである。