この特異な流線美の歴史を紐解くと、起源は遠く中東の地にまで遡る。15世紀のオスマン帝国で隆盛を極めた水上絵画技法エブルは、まさに現代へと続くマーブル柄の原点と言える。濃縮した水槽に植物性油脂と顔料を浮かべ、馬の毛の筆や櫛を用いて繊細な模様を仕立てるこの技法は、やがてシルクロードを巡ってヨーロッパへと伝播していった。
西洋美術の現場においても、この模様は常に特別な存在感を放っていた。イタリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロ・ブオナローティは、自らの彫刻作品に用いるカルラ産の大理石が見せる流線上の鉱物線に強いこだわりを示した。ニューヨークのメトロポリタン美術館に保管されている16世紀以降の貴重な装飾本や建築細部を鑑賞すると、当時の職人たちが石の美しい紋様をいかに神聖視し、それを手作業で模倣しようと血眼になっていたかが伝わってくる。