全国チェーンでありながら、この店舗が沖縄の文化拠点として愛される決定的な理由は、圧倒的な密度を誇る郷土書コーナーにある。かつて作家・池上永一が琉球王国の動乱を描き、社会現象を巻き起こした歴史小説『テンペスト』の刊行時、この書店の棚から幾千もの物語が読者の手へと旅立っていった歴史は今も語り草だ。
単なる観光ガイド本にとどまらない。琉球王国時代の古文書の翻刻本から、先島諸島の民俗誌、戦後現代史の生々しい証言集、そして地元出版社が刊行する珠玉の小冊子までが幅広く網羅されている。研究者たちがこぞって「沖縄学の現在地を知るならまず那覇ジュンク堂の棚を見ろ」と口を揃えるのも頷ける。ここは、沖縄のアイデンティティそのものを編纂し直す生きたミュージアムなのだ。