赤虎という名称が、猟犬ファンのみならずサブカルチャー層や一般層にまで深く刻み込まれた最大の契機は、高橋よしひろ氏による不朽の名作漫画『銀牙 -流れ星 銀-』です。作品内において、主人公の銀と並び熱烈な支持を集めたのが「甲斐の三兄弟(赤虎・中虎・黒虎)」でした。
長男として弟たちを率いる銀牙赤虎は、幼少期に大蛇に襲われたところを猟師・黒妖犬のベンに救われた恩義を生涯忘れず、ベンが危機に瀕した際には命を賭して駆けつけます。赤虎の代名詞となったのは、山形・奥羽の雪深い山中で繰り広げられた宿敵・巨大殺人熊「赤カブト」との死闘です。ベンを救うため、自らの左目を奪われた因縁の赤カブトの右目に飛び込み、視界を奪う相打ちとなって壮絶な最期を遂げました。
漫画内の劇的な演出ではありますが、そこで描かれた「仲間を命懸けで守る義侠心」「一度心を許した相手に対する盲目的な忠誠心」「強大な敵にも決して怯まない闘争心」は、現実の甲斐犬の性格の真髄を恐ろしいほど正確に捉えています。「一代一主(いちだいいっしゅ)」と呼ばれる、生涯でたった一人の飼い主にのみ絶対的な忠誠を捧げる気骨。これこそが、多くの読者が作品を通じて赤虎という存在に魂を揺さぶられた根源的な理由です。