葛見神社の本殿裏手に足を踏み入れると、周囲の空気が一変します。視界を埋め尽くすのは、1933年に国の天然記念物に指定された巨樹「大クス(大楠)」です。幹周りは約15.7m、根回りは20m近くに達し、樹高は約20m超。樹齢は1000年とも1300年とも伝えられ、熱海の来宮神社や鹿児島の蒲生八幡神社の大楠と並び、日本屈指の巨樹として専門家からも高く評価されています。
この大楠が持つ最大の秘密は、主幹の中央部に生じた広大な樹洞(空洞)と、そこから力強く伸びる無数の支幹・気根の構造にあります。落雷や風雨に晒されながらも千年の風雪を耐え抜き、自らの幹を更新し続けてきた姿は、まさに植物という枠組みを超えた「生命のモニュメント」です。現地を訪れた樹木医や民俗学研究者も「都市近郊にありながら、これほど原始の生命力を留めている巨木は極めて稀有」と舌を巻きます。
神社が鎮座する伊東市馬場町周辺は古くから湧水が豊かな土地であり、地下を流れる清らかな水脈が大楠の根を潤し続けてきました。樹下に立つと、木肌を撫でる風の音とともに、大地から吸い上げられるエネルギーが直に伝わってくるような感覚を覚えます。この圧倒的な生命力こそが、古来より延命長寿や無病息災のパワースポットとして尊ばれてきた根拠です。