身元特定後、山梨県警が公表した小倉美咲さんの死因は「不詳」でした。頭蓋骨の一部や肩甲骨など断片的な骨しか残っておらず、脳や内臓、主要な血管などの軟部組織が完全に消失していたため、医学的に致命傷を特定することが不可能だったためです。
この「死因不詳」という発表を受けて、再び「事件の証拠が隠蔽されているのではないか」との臆測を招くことになりましたが、法医学の実務上、骨の一部のみから死因を断定できない場合は一律で死因不詳と記載されます。警察当局は、誘拐や連れ去りなどの「事件」と、道迷いや滑落などの「事故」の両面を排除せず捜査を継続しました。
元捜査関係者や山岳救助のプロフェッショナルが指摘する最も有力な見立ては、分岐点での道迷いと滑落による低体温症です。
美咲さんが小走りで友人たちを追った道には途中で分岐があり、子供の視線からは右手の山林へ続く細い林道が本道に見える錯視が生じやすい構造になっていました。誤って山道に進入した子供は、不安から「高い方へ登る」「下り坂を駆け下りる」という極端な行動を取る傾向があります。夕暮れが迫る中で足を踏み外し、枯れ沢の急斜面を滑落して頭部を強打、あるいは身動きが取れなくなり、夜間の急激な冷え込みによる低体温症で衰弱死したシナリオは、地形および発見場所の標高差と極めて整合的です。
初動捜査でなぜ見つからなかったのかという疑問についても、枯れ沢上流部は捜索隊の歩行ルートから外れた「熊出没注意」の切り立った崖地であり、当時は生い茂る下草(藪)に覆われていたため、ヘリコプターやドローンからの上空捜索でも死角になっていたことが判明しています。