すべてのビールが同じ速度で老いていくわけではない。スタイルの違い、特にホップの使用量と製法によって、劣化のタイムラインは劇的に変化する。
日本地ビール協会が定義する多様なスタイルのうち、日本の主流であるピルスナーは、クリスプなキレと繊細なノーブルホップのアロマが生命線だ。ベースがシンプルである分、オフフレーバーの発生をごまかすことができず、劣化の兆候は顕著に現れる。
一方で、熱狂的な支持を集めるIPA (インディア・ペールエール)や、クラフトビールの代表格であるヘイジーIPAなどは、さらにシビアな時間管理を要求される。これらのスタイルに含まれるミルセンやリナロールといった揮発性のホップ芳香成分は、熱と酸素に対して極めて脆弱だ。冷暗所保管であっても、製造からわずか2〜3ヶ月で華やかなトロピカルアロマは半減し、半年も経てば酸化した草のような濁った苦味へと変貌する。
逆に、アルコール度数が8〜10%を超えるバーレイワインやインペリアルスタウト、野生酵母を用いるランビックなどの特殊なスタイルは、適切なセラー環境であれば数年単位の「意図的な経年変化(熟成)」に耐えうる。しかし、冷蔵ショーケースで売られている一般的なクラフトビールに関しては、「記載された期限内であっても1日でも早く開ける」ことが鉄則である。