モールの敷地北西角へ回ると、近代的なガラスファサードとは全く異なる重厚な空気が漂う。1908年(明治41年)に建てられた旧堺セルロイド会社の「赤レンガ館」だ。取り壊すのではなく、ランドマークとして丁寧に保存・活用されたこの建物は、訪れる人々に強い文化的ノスタルジーを喚起させる。
赤レンガの壁面を背景に、屋外テラスで淹れたてのコーヒーを味わう人々の姿は、まるでヨーロッパの街角を切り取ったかのようだ。商業開発が時に失いがちな「土地の歴史と誇り」を、この赤レンガ館が見事に繋ぎ止めている。歴史を知る古くからの堺市民も、新しく越してきた若い世代も、この普遍的な美しさの前では等しく足を止める。