本作のメガホンをとったオリヴィエ・ダアンは、従来の紋切り型な伝記映画の枠組みを大胆に解体した。時系列をあえて解体し、過去のトラウマ、栄光の瞬間、そして衰弱した晩年を交錯させる手法によって、ピアフという人間の混沌とした精神世界を鮮烈に浮き彫りにしている。
きらびやかな成功譚の裏に隠された孤独の深淵。フランス映画の持つ独特の陰影と美意識が、彼女の壮絶な生き様を崇高な芸術へと昇華させた。日本公開時のタイトル『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』が示す通り、この作品はひとりの不屈の女性へ捧げられた、映画表現の極致といえるだろう。