プライモーディアルポーチが存在する最大の理由は、急所である腹部を守るアーマー(鎧)としての役割だ。ネコ科同士の激しい縄張り争いや喧嘩では、後脚を使った強力なキック(通称キッカー)で相手のお腹を鋭い爪で引き裂こうとする。その際、皮膚に十分なゆとりがなければ、内臓に達する致命傷を負ってしまう。余分な皮ふが滑り止め兼クッションとなり、鋭い攻撃の衝撃を逃がすのだ。
さらに、猫の解剖学的な運動性能を高める機能も見逃せない。猫が俊敏に跳躍したり、背中を大きくしならせてダッシュしたりする際、お腹の皮膚が突っ張ることなく関節をフルに可動させられるのは、このゆとりがあるおかげである。
加えて、野生下における「大食い」への適応という説もある。捕獲した獲物を一度に大量に胃へ流し込んだ際、胃が大きく膨らんでも皮膚が破綻しないよう、あらかじめスペースが確保されているわけだ。海外の獣医臨床論文でも、この余剰皮膚が消化管の急激な拡張に対応するための構造的余裕であるとする分析が報告されている。