お賽銭を巡る議論において、近年避けて通れないのが「金融機関による硬貨取扱手数料」の現実です。大手都市銀行やゆうちょ銀行が窓口およびATMでの硬貨預払に手数料を設定した結果、賽銭箱に投じられた1円玉や5円玉の入金コストが神社側の深刻な経営課題として浮上しました。
都内の神職は取材に対し、次のように現場の苦悩を明かしています。「小規模な神社では、正月期間に集まった大量の1円玉を集計して入金する際、額面以上の手数料が発生して実質的な赤字になるケースさえあります。氏子や参拝者の真心を無下にはできませんが、賽銭の管理は従前以上に慎重な対応を迫られています」。
こうした状況を背景に、京都や日光、東京などの一部寺社では、賽銭箱の脇にQRコードを掲示し、PayPayや各種電子マネーによるキャッシュレス決済を導入する動きが広まりました。「小銭を持ち歩かない若年層やインバウンド観光客への利便性向上」「盗難リスクの低減」「集計・両替コストの削減」といったメリットが現場から評価されています。
しかし、この動きに対しては氏子総代や伝統派の参拝者から「風情が損なわれる」「神仏への供物としてデジタル数値は馴染まない」といった反発も根強く、神社本庁関係組織内でも慎重論が根強く残っています。デジタル決済が浸透する一方で、古来の「身を清め、実体を伴う供物を差し出す」という信仰の本質をどう維持するか、神社界は今まさに過渡期の試行錯誤を続けています。