定額制ストリーミングサービスの台頭は、人々の映画習慣を根本から塗り替えた。NetflixやU-NEXTを開けば、世界中の膨大なライブラリへ指先一つでアクセスできる。いつでも止められ、寝室のベッドで楽しめる手軽さは圧倒的だ。しかし皮肉なことに、この手軽さの普及こそが、映画館という物理的な空間の価値をかつてないほど引き上げることになった。
現代のシネマコンプレックスは、単なる「上映施設」ではない。五感を揺さぶる巨大スクリーン、体を震わせる重低音、そして暗闇のなかで大勢の他者と息をのむ瞬間を共有する特別なイベント会場へと進化した。今日の映画興行において、ヒット作が興行収入数十億、数百億円のメガヒットを記録する背景には、「どうしても劇場のベストポジションで目撃したい」という熱烈な鑑賞動機が存在している。