二人の物語の起点は、1990年代後半の早稲田大学に遡る。後輩としてサークルに加わった仁美さんは、障がいを特別視することなく、一人の男性としての乙武洋匡に惹かれていったという。2001年3月、二人は結婚。世間はこれを「障がいを乗り越えた純愛の結実」として大々的に祝福した。
だが、日常は美辞麗句だけで回るものではない。朝起きてから夜眠るまで、食事、排泄、移動——生活のあらゆる局面に介助が介在する。長男の誕生を皮切りに、次男、そして長女と3人の子どもに恵まれたが、それは同時に「育児」と「夫のケア」という二重の重責が彼女の両肩にのしかかることを意味していた。メディアの前で見せる笑顔の裏で、家庭内には徐々に張り詰めた緊張感が漂い始めていた。