世間一般において、木村多江には「裕福なお嬢様育ちで、苦労を知らずにエレガントな道を歩んできた」というイメージを持たれがちです。しかし、実際の半生は試練の連続でした。
前述した20代での父親の急死による極貧バイト生活に加え、私生活における結婚・出産でも大きな壁に直面しています。2005年に大手広告代理店に勤務する一般男性と結婚した木村ですが、その後の妊娠時に重度の切迫流産と診断され、約8か月間もの絶対安静ベッド生活を余儀なくされました。
「寝返りを打つことすら許されず、天井だけを見つめながら過ごした」という当時の手記や告白は、多くの女性の涙を誘いました。女優としてのキャリアが最も乗っていた時期に現場を離れ、命懸けで第1子を出産した経験が、彼女の演技に圧倒的な「命の重み」と「人間的な深み」をもたらしたのは間違いありません。
「順風満帆な美女」ではなく、「理不尽な苦難を受け止め、泥をすすりながら乗り越えてきた表現者」。この真実を知ることで、彼女の若い頃の切実な美しさと現在の柔らかな佇まいが、より一層胸に迫るものとなります。