知識として理解しても、長年染みついた運動習慣を変えるのは容易ではありません。そこでおすすめしたいのが、視覚とリズムで脳に直接刻み込む方書き順覚え方です。
語呂合わせのフレーズとして最も指導効果が高いのが、「点・横・カギ・シュッ」のリズムです。3画目の横折鉤を「カギ(鍵穴の形)」、4画目の払いを「シュッ」と言語化し、声に出しながら指で宙に書く動作を3回繰り返してください。カギ状の枠を先に固定してから、その隙間をシュッと貫くという動作イメージが定着すれば、二度と「万」の残像に惑わされなくなります。
さらに、この正しい筆順を意識するだけで、文字のバランスは劇的に整います。書道家が実践する方書き方美文字のコツは以下の3点に集約されます。
- 重心の直撃(1画目・2画目):1画目の点はマスの垂直中心線上にまっすぐ打つ。2画目の横画は短めに、やや右上がり約6度の傾斜をつけると文字全体に品格が宿る。
- 内側への絞り(3画目):横折鉤の縦部分は、垂直に下ろすのではなく「やや内側(左下)」に向かって軽く反らせながら進め、最後は中心線に向かって鋭く短く跳ねる。これが文字の締まりを作る。
- 長大な伸び(4画目):最後の左払いは、1画目の点の真下、2画目の横画の中央付近からスタートし、3画目の曲がりの懐をゆったりと横切って、一番遠い左下へ伸びやかに払う。
3画目でしっかりとした「壁」を右側に築いているからこそ、4画目の左払いを思い切って長く伸ばすことができ、左右のバランスが完璧に均衡します。払いを先に書いてしまうと、その後の曲がりが外側へ逃げてしまい、間延びした締まりのない文字になりやすいのです。