重厚な低音ボイスと鋭い眼光で日本映画を支え続けた名優・夏八木勲さんの直接の死因は「すい臓がん」でした。2013年5月11日午後3時22分、神奈川県鎌倉市の自宅で息を引き取り、享年73歳(満73歳没)という早すぎる別れとなりました。
病気が判明したのは、逝去の約半年前となる2012年秋頃のことです。定期的な検査や体調不良をきっかけに医師からすい臓がんの告知を受けた段階で、すでに病状はかなり進行していました。すい臓がんは自覚症状が出にくく、早期発見が極めて難しい難治性の病気として知られています。
告知を受けた夏八木さんは、ショックに打ちひしがれる間もなく、ある固い決意を固めます。それは「周囲の映画・ドラマ関係者に決して病名を明かさない」という徹底したプロ意識でした。余計な心配をかけたくないという配慮はもちろん、「病気の役者」という色眼鏡で見られることなく、あくまで純粋な表現者として作品に向き合いたいという、役者としての誇りによる選択でした。