焼肉選びにおいて一般消費者が最も陥りやすい罠が、黒毛和牛 A5ランクという格付けに対する過剰な盲信です。この格付けは日本食肉格付協会が定める基準ですが、ここで知っておくべき決定的な事実は、「A5というランクは肉の味や旨味の強さを保証するものではなく、歩留まり(可食部の割合)とサシ(脂肪交雑)の多さを示す規格に過ぎない」という点です。
サシが極端に入ったA5ランクの霜降り肉は、最初の一口こそ濃厚な脂の甘みで強いインパクトを与えますが、3口目以降は脂の重さが勝ち、最後まで美味しく食べ切ることが難しくなります。本当に優れた北新地の名料理人は、あえてBMS(脂肪交雑基準)の数値が中程度(A4〜A5の軽めのサシ)でありながら、飼育期間が30ヶ月以上と長い雌牛を厳選して仕入れています。これにより、赤身自体に含まれるアミノ酸の旨味が凝縮され、何枚食べても飽きのこない最高の焼肉体験が生まれるのです。
また、シャトーブリアン 希少部位を注文する際も、単なる厚切りではなく「筋膜の丁寧な除去」と「火入れの休ませ方(余熱調理)」が徹底されているかどうかが味の9割を左右します。スペックの表記だけに惑わされず、店舗の肉に対する思想を見極めることが肝要です。