建設から100年以上、被爆から81年が経過した原爆ドームの建物自体の脆弱化も無視できない。剥き出しの赤レンガや亀裂の入ったコンクリートは、長年の雨風や日差しに晒され、常に崩落のリスクと隣り合わせだ。
近年、南海トラフ巨大地震をはじめとする大規模地震への備えが全国的に叫ばれるなか、広島市は2026年から2026年にかけて新たな耐震補強調査を実施した。ポイントは「修復したと分からない修復」である。外観を完璧に「被爆直後の姿」のまま保ちつつ、内部から目に見えない炭素繊維補強材や極小の樹脂注入を施すという高度な職人技と最新工学の融合が進められている。
「廃墟の姿を留める」という矛盾した命題に挑む修復チームの苦悩は絶えない。補強しすぎれば「歴史の生々しさ」が失われ、放置すればいつか崩れ去る。一歩間違えれば二度と取り戻せない文化財保護の現場では、ミリ単位の慎重な作業が続いている。