本作を歴史的傑作へと押し上げた最大の功労者は、主演を務めた横浜流星に他ならない。彼が演じる鏑木慶一は、変装と偽名を用いて工事現場の作業員、介護施設のスタッフ、WEBライターなど、まったく異なる人物になりすまして潜伏する。
圧巻なのは、その姿ごとに醸し出す空気感が完全に切り替わる点だ。しかし、どんなに外見や口調を変えても、その奥底に潜む「透明な孤独」と「真実を求める切実な瞳」だけは揺らがない。徹底した肉体改造と役への凄まじい没入によって生まれた演技は、スター俳優の枠組みを完全に突破している。刃物のように鋭い佇まいと、ふとした瞬間に見せる人間味。この二面性が観客の心を捉えて離さない。