この物語の根底に流れるのは、報われぬ恋の情念だ。雪深い水辺に棲む白鷺が美しい娘の姿へと変身し、一途な恋心に身を焦がす。しかし、その思いはやがて狂気へと変わり、最後は地獄の苦しみ「地獄の責め」を受けることとなる。人間ならぬ存在が人間の感情を手に入れてしまったがゆえの苦悩。それは300年以上前の江戸時代に作られたストーリーでありながら、現代を生きる私たちの胸にも容赦なく刺さる。
傘を手に雪中で踊る可憐な娘の姿から、傘を捨て、傘の骨で地獄の苛烈な攻め苦を表現する凄惨なラストへ。その劇的な落差こそが、この演目の真骨頂である。観客はただ美しい舞を眺めているのではない。愛することの美しさと恐しさ、その両極端な感情の奔流を体感させられているのだ。