ガラスと鉄骨で構成されたスマートシティ化が進むほど、人は相反する泥臭さを求めるのかもしれない。近年、東京・渋谷や大阪・梅田周辺の路地街区では、再開発の波を免れた古民家や長屋の価値が急上昇している。整然と区画整理された大型複合ビルにはない、不揃いで歪な空間構造そのものが、強力なプレミアムとして認知され始めたのだ。
都市空間の多様性を研究する都市計画家は、この現象を「都市のゆとり空間の自発的再燃」と呼ぶ。巨大デベロッパーが提示する完璧なショッピング体験とは異なり、路地には「予期せぬ発見」がある。幅2メートルにも満たない通路に溢れ出す鉢植え、頭上を交差する電線、壁にしみついた時間の層。それらすべてが、均質化する都市に人間味のある輪郭を取り戻させている。